この作品は予告編で気になっていたのでタイミングが合えば映画館で見たいと思っていた。最近は映画館でないとこういう映像美が持ち味のアート系映画は集中して観れない気がするので行けて良かった。
まず初めに感想をまとめると、映像が絵画のように美しく、夜のランプとか蝋燭のある場面のシーンはまさにジョルジョ・ド・ラトゥールの絵のようでそれだけでも見て良かったと思った。
以下ネタバレ含みます。
映像美
夜の場面の撮影は多分特殊なカメラじゃないとこんなに肉眼で見たものに近い感じで撮れないのでは?と思ったのでその辺の技術が特殊なものなのか案外昔からあるやり方で撮れるのか気になった。
あえての画素の洗いシーンとかぼやけた表現も凝っていて面白かった。
ストーリーは難解
事前の情報は予告編と「4つの時代を少女たちの視点から描く作品」ということのみ知った上で見た。
まず「ストーリー」のようなものを追おうとすると難解で同じ農場の別の時代が時系列順ではなく入り乱れる感じで映し出される。
時代が変わったな、というのは登場人物の服装などからわかるのだが、冒頭の「エリカ」が登場する時代は多分ほぼ冒頭(と80年代の人物の回想?)のみなので4つ時代あるか??と混乱したり、80年代と2020年代が最初違いがわかりづらかった。
そして登場人物は時代を跨いで登場する人や、視点人物は皆血縁があるようなのも見ているとわかるのだが、映画を見ながら頭の中で相関図を描くのが難しい。
で、調べたら公式が見終わった後に見てくれ、といった形で相関図を公開していた。
https://gaga.ne.jp/rakkaon_NOROSHI/about/
確かにこの相関図を見るとこの作品の輪郭が若干はっきりする気はするのだが、この作品はなんかそういう全体の流れを追うことが重要でもない気がした。
ただ、80年代の「アンゲリカ」が失踪したらしい描写があるけれど彼女の孫にあたる少女が2020年代の視点人物らしいというところは一度この農場から逃げ出した少女の子孫がまた同じ場所に戻ってきている、という部分に呪いみたいなものを感じるので情報として重要かもしれない。
これは相関図を見ないとわからなかった。
繰り返されるモチーフ
ウナギ、ハエ、ヘソに入った水……その他にも繰り返し登場するモチーフがあった気がする。
それは時代が変わっても人々の心理の根底にある何かしらのしがらみみたいなものを表しているのか、意図ははっきりわからないけど面白くは感じた。
個人的にだけど、なんとなくニコラス・ローグの映画の「タイムスライス」と呼ばれていた表現を想起させる。
少女たちの憂鬱
どの時代の少女も「死んでみたい」というような感覚を持っているように感じた。
そして何か大きな出来事が描かれるわけではないが常に重低音とともに「不安」が表現されていると思った。
戦時中などの歴史的に大きい出来事のあった場所が描かれていないのはもっとパーソナルな感覚に焦点を当てたかったからなのだろうか。
少女、片足の世話をされる男、希死念慮、みたいな要素から「ミツバチのささやき」を思い出したけど、多分「全然違うだろ」と言われそう。
女性の視点が描かれた作品(余談)
今回は作り手も配給も明確にそういう言葉を打ち出した説明をしていないとは思うんだけど、私はどうしても「女性が作った女性主人公の作品」に身構えるところがある。
なんというか、登場人物に同じ性別として共感できるかどうか、みたいなところを意識してしまうから。
映画監督は男性の方が多いから仕方ないのかもだけど、女性が描いた女性の映画はなんかそれそのものが大きいテーマのような、特別なものだと鑑賞者として勝手に捉えてしまうところがある。
今回の作品における「女性が感じる視線への不安・抑圧」についてはあまり共感をもって見ることはできなかった。
いや、もしかしたら共感したくなかったのかも。
あまり幸せにならない女性キャラクターに感情移入するとしんどいのかも。
女性が作った女性主人公の映画で「ひなぎく」は大好きなのだけど、これは裏側にはシリアスなテーマも含んでいそうでありつつ、ユーモアと明るさがあって、共感するかどうかを意識しないでみられる気がする。
ただ不思議なのは表面的な描写として「女の子が可愛い」と「食べ物を粗末にする」という要素はむしろあまり好きではないのにこの映画はなぜか好きなんだよな。
と、かなり今回の映画の感想から逸れたけど、「私はシリアスに女性の苦悩を描かれると受け止めるのがきついんかも」というのを今回発見したという話。
共感できたところ
「おばあちゃんの顔を思い出そうとしてもぼやけてしまうけど、死に顔は鮮明に思い出せる」
この部分はめちゃくちゃはっきりした感覚で共感できてうるっときた。
この顔がはっきりしない、という映像表現は終盤にも出てくるけど曖昧な記憶としての表現としてすごくしっくりきていて良かった。
その他アホな感想
「見えとるけどこれレーティングなんだっけ」
昨今男性の乳首さえも公共の場の広告では隠されがちのようだけど、日本の映画のレーティングも前より厳しくなった印象とはいえ緩い気がする。ただこれは個人的には良い意味でゆるいと思う。
この映画はPG12だけど、IMDbで調べるとドイツ本国では16(多分16歳以上対象)というレーティングでその他の国も日本の基準より年齢が高い。
局部露出ない性行為のシーンがあって、性行為ではないけど女性がおでこに男性のアレを当てる(モザイクなしで見えてる)シーンがあるので、ちょっと驚いた。
つーかこのおでこに当てるシーン謎すぎてちょっと笑った。見間違え??じゃないよな?あったよなこのシーン???
ただ12歳の子供を連れてこの映画を見る家族はまあいないし子供への悪影響みたいな観点からは何も問題はないような気もするが、でもだとしたら対象年齢は15でもいい気がする。謎。
なんでこんなにレーティングを気にするのかというと、自分が最近自主制作している作品がSNSの基準だとセンシティブかどうか判断が微妙に難しい表現を含んでいるからです。
映画は映画館や配信だったとしても「見るぞ」と選択してから再生されるからかSNSに投稿する静止画とはちょっと扱いが違うというのと、やはり全体を通して見た時にいわゆるポルノ的な表現とは明らかに違っていたり、現代の倫理的にも忌避される内容ではないからこれくらいのレーティングでいい気がする。
「自転車に乗ってウナギを掴む謎の大会」
ウナギってドイツにもいるんだなーというのと、この自転車で通り過ぎながらウナギをとる大会?みたいなのってよくある遊びなのだろうか?
この映画はショッキング映像はそんなにないけど常に不穏なムードなので誰かが自転車から落ちて大怪我、とかあるのだろうか?という気にさせられたな…….
「これやってるけどレーティング(略)」
割と性的な描写があって、正直12歳の子に何が行われてるのか説明しろと言われると困る感じがする……
女中と足を失ったフリッツのシーンは割と当時の女性の抱えてた問題を表現してるのかもしれないけど、「無害な女」のところがわからなかったなー
「目を縫って開かせるの?!そして写真撮るの?」
死んだ若い女性は死体を生きているように目を無理やり開けて写真撮る、という文化があるのだろうか?おばあちゃんの時はやってないので若い人だけ?と思ったんだけどこの映画で個人的に一番映像的にびっくりしたシーンだった。
人形なんだろうけどめちゃリアルだったな……
まとめ
いつにも増してまとまらない感想になってしまった。でもそのくらい本作は輪郭がぼやけた感じの表現(意図的な)が多くて思考が散らかってしまった。
よくわからなさが凄く、ただ映像はかなり綺麗だったので、映像の面白さとか美しさに興味ある人は楽しめるかも。
題材的には個人的な好みでいうともうちょっと明るい場面(ユーモアのある場面)もある方が好きかなー