キリングストーキングというBL漫画読んでダメージ受けた話。

今日は漫画の感想書きます!ネタバレあり。できるだけ上品に書きたいけどR18のBLウェブトゥーンの話なのでご了承を……

 

実は(ちょいちょい発言しているが)今年の初めあたりの主に精神的に疲弊して調子を崩していた時期、久々に「美男子がイチャイチャしてるのを見たい」という症状が現れて、調子が戻った今でもBL漫画を読み漁る日々を送っています。

 

で、当初は癒しを求めた現実逃避として読んでたのに、元気になってきたからなのか、結局この数ヶ月で1番気持ちを持って行かれた漫画は「キリングストーキング」という、BL要素のあるサイコホラー漫画だったという話を今回書きたい……

明確に書くのは避けるけどネタバレすると思うので興味ある方は今37話まで毎日1話ずつ読めるので読んでから……って言いたいんだけど「ダメージ受ける」し私は最後まで読んで作品としては良かったけど悲しくなったのでその辺覚悟ある方は是非……

https://www.lezhin.jp/ja/comic/_killstalk

 

公式の作品紹介↓
「あなたのことが好きです」―決して届けられないこの切ない想いは、やがてストーキングという歪な形に変わってしまった。大好きだったサンウの家に侵入したウジン。しかし、いつも明るく、優しかったサンウはそこにはいなかった。ウジンが彼の家で目撃したのは底を知れぬ深い闇…。それに気づいた瞬間、ウジンに死の脅威が迫る…!

 

 

今回感想書くことにしたのは、この漫画内容が重たすぎてさらに言うと(まあ設定からして予想はつく通り)終わり方が哀しいからどこかに出さないと私の精神が危ういからです。

 

……ああ……癒しを求めて始めた趣味でこんなにダメージを受けるとは……

ホドロフスキーが「映画で人の心を射抜きたい(傷つけたい)」っていうようなことを言っていたが、作品内容の容赦なさで傷つくのは久々な気がする。ちなみにホドロフスキーの映画でこの感じの傷つき方をした事はないが……

 

ストーカーだったウジンは優しいと思っていたサンウの家に不法侵入したところで監禁されている女を見つけて、ウジンもまた監禁されることになる、という導入を読んだ時は「い、癒しがない……というかこれBLか?」ということで食指が向かなかったのですが、今毎日無料なので読み進めるとハマってしまった。

そして最後まで「2人の関係がラブに変わる日が来るのか?」という疑問を抱えて読み切ったけど、「愛ってなんだろう……(深)」みたいな気持ちになってる。

で、一読者としては、2人の間の感情が愛だった瞬間はあると思いたい、という感想かな。

 

ずっと共依存だったり洗脳だったりストックホルム症候群のようにしか見えない関係なんだよね。2人ともメンヘラ(境界性人格障害ぽいところがある)だし。

そしてそれは愛ではないと言い切れるのか、みたいな混乱が頭の中で巻き起こったりして……本当にこの数日めっちゃ掻き乱されたぜ……

そもそも主人公2人も自分たちの感情に困惑してる描写もあるので、その明確でない部分も見事な気がした。

(あとがきの作者インタビューでは「最後まで見守ってくれた方にはわかると思います」とのことだけど俺はいまだに悩んでいる……)

 

サンウは最初からウジンに自身のトラウマとなっている母親(彼が狂ってしまった原因)の姿を重ねていて、それを愛と誤解しているのか、ウジンは性的な虐待と殴る蹴るの虐待を受けて育って、対人関係の結びかたがわからない中でサンウからキスされて混乱しているだけなのか。

 

前半でサンウにけしかけられて、本人の意思でもあったけど彼もまた殺人を犯してしまうあたりで、ウジンを引き止めるものはより強固になるわけだけど、これ以外にもウジンはサンウによって退路を塞がれた状態にあるので、やはり純粋な愛情なのかずっとはっきりしないんだよね。

 

なんか最後まで純粋な愛というよりお互いへの執着のみ残って終わった気もするが、私がこの作品で瞬間的にでも2人の間に愛があったと思いたい根拠は以下のような要素だった。(主にサンウの感情が母ではなくてウジン自身に向いていた瞬間があったのかどうか) 

 

・サンウが明らかに異性愛者でゲイに差別意識さえありそうだったところから、少しずつウジンとの性的な行為を受け入れていく過程。

 

ウジンをウジンとして受け入れたいと思っていたのが表現されてた部分なんじゃないかなー……と思いたい。ウジンは肉体的に男で母親とは違うから。当初キスはするが口でされるのは拒む→最終的にはサンウがウジンを口で愛撫するようになる。「俺はゲイじゃない」けどウジンが望んだからそれをしたと言うあたりとか、ウジンが幸せそうで思い起こすとつらいけど好きなシーンだな。

最近読んでるR18の漫画はまあそりゃそうなんだけど性行為のシーンってサービスカットみたいな印象のものが多いんだけどこれは関係性の変化とか、2人が離れられない理由とも紐付いていてそこもよかった。ちゃんとエロいけど。

 

・サンウがウジンに経験したことのないことを経験させようといろんなところにデート行っていた時期。

 

この作品の中で私としては一番読んでて癒されたところだなー

ウジンが純粋に幸せそうでこのまま報われてほしいとすごい思った。サンウに対して恐れもあるウジンがなんでもサンウの言うことを信じることに対してなのか、遊園地でサンウが「俺を信じるな」というのも、最終的にウジンが傷つくの懸念したからなのかな、と思いたい。

スキー場で、周りに人がいる場所でウジンに抱きつかれても拒否しなかったところも。

前半のサンウがウジンにした事は彼の過去のトラウマをウジンにも味あわせて憂さ晴らしするようだったのに比べて、この辺りのデートの展開は単純な思いやりがあったと思う。

 

・性的に満たされているウジン

 

叔父による性的虐待以外で他人との性的な接触のない人生だったウジンが、サンウとの関係では満たされているのは明らかだったので、これは本能的な欲望からくるものかもしれないけど、前述したデートの下りと併せてサンウに出会わなかったらウジンが得られなかったものでもあり、永遠には続かない瞬間だけどウジンの心が愛に満たされてた時期はあったと思う。

それから、強引に行為に及んでいるようで、ウジンが自傷行為の後サンウに迫られた時に、一度行為を拒否したところも印象的だった。2人の関係がある程度フラットに近づいていて、サンウが無理やりしなかったところも愛情なのかもな。

 

・サンウがウジンの叔父さんを殺した後数日家を空けて後に帰ってきた時に「お前はあの女と違うのに」と言うところ。

 

結局サンウは最終的にサイコパスな母親からされたこと、してもらえなかったことへの呪いのようなトラウマから逃げられなかったんだなとは思うんだけど、必死にウジンと母を切り離そうとしてたんだと思う。愛してたかはわからないけど愛そうとしてたと思いたい。 

 

・そのサンウが家を空けているころにウジンが見つけた子供時代サンウがもらったラブレター

 

サンウは相手を差別せずに優しくできる子供で、誰かに好意を寄せられた事を未だに大事にしているのがわかるので、サンウは共感性のないサイコパスではなかったのかな、と思える。

 

・死に際にサンウがウジンの名前を呼んでいたと言う証言。

その証言をしたお婆さんの話が正しければサンウはそのお婆さんに殺されたわけだけど……

でも死に際に呼ぶ相手はやはり一番憎んでいた相手か、一番愛していた相手だと思う。

で、ウジンは後者だといいな。もしかしたら両方混じった感情かもしれないけど。

 

 

他にも読み返せば愛情の欠片みたいなものを感じられるシーンはあるような気がする。でも愛情って継続してそこにある感情じゃなくて刹那的なのかな、と思わされる作品だな……

 

そして以下に私が「哀しい」と感じたポイントをまとめるよ……

 

・虐待する叔父さんから逃げたいウジン、でも虐待するサンウからは虐待される役でもいいから必要とされたいウジン。

 

この他人との関係の築き方がわからないウジンがその理由も丁寧に描かれた上で側からみれば非合理的な言動だけど、説得力があって痛々しい。

でもこれもまた愛情の欠片のある要素だったなと思うのは、必要とされること自体を求めていたウジンが、終盤でサンウをおいて買い物に行けるようになったあたりで、サンウのために自分にできる事がないかと聞くあたり。自分のためじゃなくて。

でもウジンにはサンウを救えないらしいというのがわかってしまう残酷さ……

2人で話し合って乗り越えてほしかったなーこの辺りの心理的なものは。でも傷ついたもの同士では無理なのだろうという現実味がすごくある。

 

・渡せなかった指輪。二度と会えなかった2人。

なんで行き違いになってしまったのかなー

でもこれが渡せなかったところもやはりリアルなんだよね。

指輪を買うお金を借りる勇気は出せたのに、サンウのいる病院までの交通費を借りる勇気が出せなかったのも、何かを比喩しているのかな。

 

・サンウの顔を思い出せないウジン

これ、ホントに悲しすぎて辛いのよね。

好きな人の顔を思い出せない、といえば今敏監督の「千年女優」を想起したんだけど、私にとってこのシチュエーションが非常に哀しいというか怖いものな気がした。

ただ、この時点でのウジンにとってサンウは好きな人だったのか……これも気になるところ。

 

・ラストシーン

顔を思い出せなくなったのは、少しずつウジンにとってサンウへの執着とかが過去のものに変わる描写なのかなと解釈もできる気がするけど、あのラストシーンでは結構ウジンはサンウへの感情に囚われたまま解放されることはなかったとも取れる。

サンウの幻を追って不慮の事故でウジンは死んだと解釈もできるしそれが正しい気はするんだけど……

なんかウジンには生き残ってその一時的な未練から立ち直ってまた自然な恋愛?をするみたいな長い目でみたら客観的なハッピーエンドであってほしいとも思ってしまう。

しかし、生前にサンウがウジンに約束させた「死んだら後を追え」という呪いが遂げられた方がサンウの目線だとハッピーエンドなのかな。

 

・結婚契約みたいな約束

好きなシーンでもあるけど終末を示唆しているようで哀しい。

ウジンは自傷行為の経験があるにも関わらずサンウと生きることに意識が向いていて、サンウは「俺は歳をとらない」と以前に言っていたように、長く生きるつもりが無いし、ウジンと死ぬことを意識してるようなのが哀しいんだよな。

 

・サンウの心の傷はその存在すら誰にも知られず、癒されなかった事

 

両親も殺すようなサイコパスなのかと終盤まで思われていたんだけど、終盤両親の死はサンウが手を下したわけじゃないのが読者にはわかるんだよね。私としてはその傷についてウジンに打ち明けて乗り越えてほしかったんだけど、そうはいかない現実。

最後までサンウはそのことを誰にも知られずに囚われたまま、彼が恐れていたように苦しみながら死んでいく……あんまりだよーーーつら。

ホドロフスキーのサンタサングレって優しすぎる結末だったな……やべえ母親という点に共通点感じた)

 

という感じで…….もうキリがないくらい感想が出るけどそろそろまとめに入りたい。

 

最後に、他のBL漫画とあきらかに違ってそこに魅力を感じた点。

猟奇的な設定もそうだけど、ウジンの描き方が決して美形ではないところと、それなのにエロかったり可愛かったりする瞬間がちゃんとあるところなんだよな。

あとガリガリで小さいウジンがサンウより4歳年上なんだけど、サンウの方が支配的でウジンが「サンウさん」って付き従うところもある種のフェチを感じる。(でも切羽詰まると呼び捨てになるんだよな。これも良い)

あ、フェチといえばこの作家さんは体描くのが上手いけど特に脚がセクシーでした。

 

 

それにしても!!!

 

フィクションの作品に没頭することがこのところなかったけど、こんなに「実在しないキャラクター」の心のうちについて考えを巡らせたのが本当に何年振りだよ、という感じだった事もあり、後遺症がやばい。しばらくひきづると思う。

 

いや、そうなんだよな。実在しないんだよ!こんな深夜まで考えちゃうなんてホントにすごい良くできた作品でした。皆にこの苦しみ味あわせたくないし、まさに劇中のサンウのセリフ「自分がこんなに苦しくなるならお前に出会わなければよかった」と私が言いたくなる作品なんで、お勧めしたいかというと微妙なんだけど、よかったは良かった……

 

今私BL漫画自分でも描き始めたんだけど、ストーリーをこれを読む前に決めておいてよかったなと思った。絶対影響受けちゃうから。(そして多分私は自分のキャラ痛めつけられないので上手く行かない)

そしてやっぱ歳とるとハッピーエンドを求めるようになると言う話は本当な気がする。壮絶な展開の後にもハッピーエンドになる作品が読みたい……

後しばらくはラブコメとか明るめなものを見ようと思った……マジで回復に時間かかる作品……